恐れと食事

「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」

このように思いながら食事をしたり
人に食べさせたりしていると
実際に、何を食べても良い方向には向かわないでしょう。

食べることに限らず、
行動の理由が「恐れ」にあると

「恐れ」によって発動された行動によって
導き出される結果は良いものになる可能性は低い、と
私は考えています。

 

ガンに野菜ジュースがいい!

  

外来にいらっしゃった壮年の夫婦の話です。
外来にいらしたのは、奥さんのが血圧が最近高くなってしまい
心配でいらっしゃったのでした。

血圧が一時的に上昇する理由として
肉体的、精神的なストレスがかかった時に
上昇することが多いので

「何か、最近、気になることや、ストレスに感じていること、
不安なこと、疲れなどありませんか?」と問診を始めました。

・旦那さんが腫瘍マーカーが高くなり
 検査を受けたら悪い細胞がある、と言われたが
 ガンだ、とは言われてない

・腫瘍マーカーが高いことについて奥さんは
 非常に心配であり、ありとあらゆる本を読み
 「野菜ジュースが良い」と知って、それから
 1日に6杯の野菜ジュースを作り、旦那に飲ませないと
 腫瘍マーカーが下がらないのでは?ととても心配

・旦那さん本人は、ガンだと言われてないのと
 腫瘍マーカーの数値もそれほど高くないので
 気楽に考えている

・旦那さん自身は年齢的にもいつ死んでもおかしくないし

 それを奥さんにも伝えているが、奥さんがそれを
 「脅しだ」と言うことがおかしい、と思っている。
 「自分は事実、本当のことを言っているだけなのに」と思うと

・旦那さんは、まずい野菜ジュースを飲みたくない

・奥さんが無理して1日に1時間近くかかってイライラしながら
 作ったジュースを飲む気がしない

・奥さんは、無農薬野菜を買ってきてそれをやっと絞って旦那のために
 作っているのに、それをきちんと真面目に飲んでくれないことが
 非常に不満である

・野菜ジュースさえ、飲んでくれれば、腫瘍マーカーが下がるのに
 野菜ジュースを飲まなかったら、夫の腫瘍マーカーが上がってしまい
 それはとても恐ろしいことである、と思っている

まとめると、このようなお話でした。
奥さんは、話をしているうちに

自分が、野菜ジュースを作ることにとても負担を感じているけど
野菜ジュースを飲ませないと、
旦那の腫瘍マーカーが下がらないのではないか?

とても恐怖を感じている、ことに

ご自身で気がつきました。

「自分は大変だけど野菜ジュースはとにかく、飲ませないといけない」
という部分について奥様の意見は、変わりませんでした。

ただ、自分が無理していることが
血圧上昇につながっているらしい、と言うことは
ご理解をしていただき、

あまり無理をせずに、一日置きにするなど
少し考えてみるよう、お話をしました。

 

恐れと食事

  

「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」

食べ物を料理したり、実際に作った物を食べるとき、
他人に食べさせる時に注意しなければならないことは

「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」と
自分や相手に恐怖や不安を植え付けながら
食べ物を摂取したり、摂取させることです。

恐れや不安を感じながらする食事を
想像してみてください。

緊張しながら食べる食事は美味しいですか?
不安を感じながら食べて、胃に不快感を感じませんか?
恐れを抱きながら食べたあと、お腹がゴロゴロ言ったり、
お腹が痛くなったり、しませんか?

恐れ、緊張、不安、は自律神経のうちの
交感神経を優位に働かせます。

消化器官は副交感神経によってうまく働くようにできているので
交感神経優位になった状態で、飲み食いをすれば
消化器官の働きが悪くなっているため
当然、消化、吸収がうまくいきません。

 

腫瘍マーカーが高い人に対して
「この野菜ジュースを飲まないと、腫瘍マーカーが上がってしまうよ」と
相手を脅かしながら、飲ませた野菜ジュースが
飲んだ人の体を良くする、とは
とても考えられません。

それは、野菜ジュース自体の栄養がない、
野菜ジュースが腫瘍マーカーを下げるわけない、という話ではなく
「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」という
恐れを含んだ状態で摂取すること、が良くない、ということです。

実際、今回で言えば、本当は野菜ジュースを飲みたくないのに
奥さんがうるさくいうので、仕方なく夫は飲んでいるのですが
それすらも本当はしたくない、のに

「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」と言われ続け
奥さんのために、半分は飲んでいるようなものになってしまっているのです。

そして、飲みたくない物を飲んでいる、というストレス
「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」と言われるストレス
(腫瘍マーカーが高い本人は、
そのことを気にしないようにしているのに
野菜ジュースを飲まされるたびに、
腫瘍マーカーが高いことを自覚させられ
放置しておくと悪い事態になるに決まっている、と
毎回そう、思わされているのですから)

このストレス自体が、心身にとても悪い影響を及ぼしていることに
まず、気がつくことは、とても大事だ、と私は考えています。

 

ストレス、というのは数値化したり
肉眼化できないために
ストレスについては、意外とそれが心身に及ぼす影響について
軽く考えてしまわれがちです。

外来にいらっしゃる患者さんでも
ご自身にストレスがかかっていること、を
あまり重大なことだ、と思っておられず

「ああ、いつもこれまでそうだったんで、それをストレスだ、とは
もう、感じなくなっていました」という声は
よく、聞きます。

「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」という言葉が
言われた人に与えるストレス、について
もっと、敏感になった方がいい、と私は思います。

 

子供に言っていませんか?

   

「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」

子供の体格が他の子供と比べて小さいから
早く、他の子と同じ平均になってもらいたいあまり
「ごはん残したら、明日のおやつは抜きだらかね!」
脅すように食事を無理に食べさせたりしていませんか?

子供は自分の体の状態にとても正直です。
もう、お腹がいっぱいになればそれ以上、食べようとしません。

が、大人は違います。
「これも食べないとバランスが悪い」
「残したらダメだ」
などの理由で、もうお腹がいっぱいなのに
食べ続けます。

お腹いっぱいな子供に食べ物を無理に押し付けるのは酷だ、と
思っていますので
私は子供が残しても無理に食べさせません。

もちろん、おやつをその前に食べ過ぎてたら
一言「明日はもう少し考えなさい」とだけ言いますが。

子供が食べない、ことで悩んでいる親御さんの声を
聞きます。

子供は自分が必要な量を知っているのだから
それ以上、
「~を食べないと、ひどい目に合うよ!」と
脅しながら食事を毎回与えることによって
後々どうなるのか?を
よく、考えてみた方がいい、と思います。

脅されながら食べさせられた食材が
無事に、きちんち消化吸収され
子供の心身の役に立つのでしょうか?

 

先ほども書いたように、緊張や不安、恐れで
人の体は、うまく働くなくなります。

本来、楽しい食事の時間
毎回、親の
「もっと食べさせないと、大きくならない」
「これを食べさせないと、頭が良くならない」etc.

などの、不安からくる強い思いによって
楽しくない時間になってしまったのなら
食べても消化吸収されないし、無理に食べさせられて辛いし
本末転倒だな、と私は思うのです。

 

食べることが恐れからくるものになれば
それはいつか、破綻するでしょう。

子供は育てば、自分で食べ物を買ったりするようにもなります。

子供の頃、脅されるように食べ物を与え続けられてきたら
自由になった時、どういう行動と取るのか?は
想像に容易いですね。

 

自然体な食事法

  

健康に良い食事
子供の脳に良い食事
悪い病気を治す食事
痩せる食事
筋肉をつける食事

ありとあらゆる「~な食事法」の情報は溢れていますが
いずれにせよ、どんな気持ちでその食事を口に入れるのか?が
一番、心身に影響しているのだ、ということを
忘れないようにしないと

「これを食べないと健康状態が悪くなる」
「これを食べないと頭が良くならない」
「これを食べないと悪い病気が治らない」
「これを食べないと痩せない」
「これを食べないとよい筋肉がつかない」

恐れで食べた食材は
返って、心身を痛めつけていることだって
あるのではないでしょうか?

 

本来、食事というのは、
外部からの情報に頼って献立を立てるのではなく
必要な食材、食べたいものは
その時々で自分自身が内部で感じて摂るものです。

「今、自分が必要な食べ物は~だ」と分からない状態が
怖いことです。 

  
外部から得た「〜な食事法」自体が
どんなに正しかったとしても
常にその方法が自分にとってそれが合っているか?なんて
分からないものです。 
  
だからこそ、
ある「〜な食事法」にこだわり続けた結果
心身が壊れてしまう人が
後を絶たないのではないでしょうか。

 

自分が食べたいな、と心から思うものは
今、必要だから、です。

食べたいな、と思うものを適量食べていたら
そこには恐れなんてなく「ああ美味しかった」という満足感と
リラックス感です。

満足感とリラックス感で口に入れた食材が
体内で、どうなって行くのか?
考えるだけで、ワクワクしますね。

満足感とリラックス感で口に入れた食材が
心にで、どういう影響を及ぼすのか?
考えるだけで、ワクワクしますね。

どういう風に食事を取るのか?
様々な情報を得て、難しく考えすぎる必要なんてない、と
思いませんか?

恐れと食事。
この組み合わせが良くない、と覚えておくだけでいいと思います。



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内科医の私がなぜ、情報発信をしようと思ったのか?
また、私自身が生きづらさからどのように
今、気楽に適当にニコニコと生きるようになったのか?

その過程を書いた記事をこちらで公開しています。

女医とも子物語

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