歪んだ家族の風景

家族によって、自分によって
間違えたレッテルを貼られた結果
自分に対するイメージが固定化され
それにより、症状が固定化され
増悪して行ってしまうケースがあります。

今日は、間違えて貼られたレッテルを剥がしてあげることが
症状を改善する時には必要なケースがある、という例を
あげてみます。

検査をしても異常がない
薬をいくら飲んでも治らない
どんどん、症状が多様化して元気がなくなっていく。
そんな時には、
「もしかして自分自身に間違えて貼られたレッテルのせいかも」と、
頭の片隅で思い浮かべられたら

今、悩んでいることが改善するかもしれません。

17歳男子 下痢腹痛を繰り返す

17歳の男子が 
腹痛と下痢を繰り返すといって外来にやってきました。 
私立の学生服を着た真面目そうなメガネの子。 
おじいちゃんが付き添ってきました。

話を聞きました。
中学生の頃から、頭痛が度々するようになりました。
病院にも2回ほど受診していました。

高校生になり、腹痛も度々起こるようになり、
この一ヶ月は特にひどくなり、
今日は学校を早退をしてきた、とのことでした。

顔色は悪くありません。
前髪長く、メガネをかけ、控えめな感じです。
一通りお腹など診察をし、
心配そうに付き添ってるおじいちゃんは外で待機してもらいました。

 

対話

私:食欲は?ごはんはおいしいですか?
男子:普通です。特においしいとかはないです。
私:夜は眠れますか?
男子:いえ、夜中の一時くらいまで眠くなりません。
私:何してるのですか?
男子:パソコンいじるのが好きで。
私:人間関係で困ってること、ないですか?
男子:(しばらく考えて)最近、吹奏楽部の人間関係があれで、
  やめたところです。

私:なるほど。で、両親はこの繰り返す体調不良については、
  なんと言ってるのですか?
男子:母親は「大丈夫なの?」って感じで聞いてきますけど、
  僕は昔からからだが弱いので。
私:昔から?中学生のときより前もですか?
男子:いえ、中学になってから、からだが弱いので。

私:お母さんは、心配して、病院に付き添って受診はしたことはありますか?
男子:ないです。仕事をしているので。
私:なるほど。お父さんは?
男子:特になにも。
私:家族の仲はいいのですか?
男子:中1の妹が最近、学校から帰ると荒れてて、
   家族がそれに振り回されてる感じです。
私:公立中学なんですか?
男子:私立に通っています。
私:なるほど。わかりました。

男子は、控えめな普通の学生。
いじめられていることはない、とのことでした。

診断

診断は比較的簡単で、

過敏性腸症候群” と診断しました。 

 

症状としては、下痢が多いがこれは口から入った食物が胃酸によって消化されドロドロの状態となり十二指腸を経由して小腸に送られ体内に吸収され、その残滓が大腸へと送られさらに水分が吸収され便となり排泄される。その際に何らかの原因で水分の吸収が正常に行われないと下痢となる[3]

その原因として、腸の運動を司る自律神経の異常による大腸を中心とした消化管運動の異常、消化管知覚閾値の低下、精神的不安や過度の緊張などを原因とするストレス、ライフスタイルのゆがみなど複合的な要因が指摘されている[1]。また、元々神経質な性格であったり自律神経系が不安定であったりする人が、暴飲暴食やアルコールの多量摂取などを行ったり、不規則不摂生な生活、過労や体の冷えなどの状態に置かれた場合に症状が発生する場合がある。

 

 

近年、過敏性腸症候群IBS)にはセロトニンという神経伝達物質が関係していることが指摘されている。セロトニンは、その約90%が腸内にある。ストレスによって腸のセロトニンが分泌されると、腸の蠕動運動に問題が生じ、IBSの症状が現れるとされている。腸は第2の脳とも言われるほどに脳と神経によって密接に関連しており、不安やストレスに対し脳からその信号が腸に伝わることで腸の運動に影響を及ぼす。この信号が過敏となり伝わりやすい状態になっていることで腸が過剰に反応する。ストレス信号を受けると、まず胃からセロトニンが分泌され、腸内のセロトニン受容体と結合し、腸の蠕動運動に異常をきたし、腹部の不快感、腹痛、下痢などを引き起こす[4]

 

 

処方は漢方薬を処方しました。

薬だけ処方しても、日々の生活の根本がそのままだと
治ることがないので、少し考え方の指導をしました。

この子の場合に問題なのは、
「自分に対するセルフイメージが低い」ことです。

17歳で、自分のことを「病弱なヤツだ」と決めている。

原因がわからなければ、頭痛や腹痛を繰り返してたら
そう思うのも仕方のないことです。

ですが、そのように思い込んでいるからこそ、
頭痛や腹痛もよくなるどころか、
歳を重ねるほど、経験を重ねるほど、ひどくなるのです。

「どうせ俺は病弱なヤツだからしょうがない」というレッテルを
間違えて貼ってしまっているから
レッテルがそのままなら
半ば諦める大人になっていってしまいます。

なので、そこを書き換える必要があります。
間違ったレッテルを剥がしてしまわないと。

自分自身も、家族などの周りにいるひと達にも
それを理解してもらわないと。

根本をみる

彼をみたときに
•真面目
•パソコンオタク
•控えめで目立たない
•病弱 
•言いたいことを言えない気弱な正確

このように、表面だけみて、
レッテルを貼り付けたらいけないのです。

自分自身も、周りにいる家族なども、上のように思っているのです。

親や周りの大人に余裕がない
子供の表面的な部分だけを見て
「この子はこう言う子」と思い通りに育たない子供に
投げやりなレッテルを貼ってしまいがちです。

だから、男の子はあのような姿、目つき、顔つき、態度になり、
おじいちゃんが心配もするのです。

親は、兄には興味を示さない。
妹に振り回されてるだけです。

そうではなく、彼は
•頭が良くて
•パソコンが得意であり
•優しいので、言いたいことは我慢して言わない
•周りのひとのことに、よく気がつくので、
 気を遣って、自分は控え目にしている。
•親にまだまだ甘えたいこともある

こっちが根っこの部分です。
こちらが正しい彼の姿です。

わたしは、彼の本当の姿を彼に伝えました。

「あなたは、頭がよくて、よく気がつくし、
優しいから、妹の態度がひどいと自分は我慢してますよね」

うなずきました。

「お腹が痛くなるのは、自律神経という神経の調子が整わないからです。
病弱だから頭やお腹が痛くなるのでではなく、
自分の心のコントロールの仕方がわからないから
体の調子もおかしくなっているのです。

自分のことが、自分の心や気持ちがわかるようになれば、治ります。

心にストレスがかかり、気持ちが良くない時には
自律神経のバランスがおかしくなります。
緊張の方の神経、交感神経ばかりが
働いてしまうようになり、
自律神経のバランスがおかしくなると
いろんな体の症状が出てきます。

自律神経は、呼吸でコントロールすることができる神経。
なので、緊張したり、イヤな場面、イヤなひとが現れたら、
まず、深呼吸だけ意識をして、リラックスするように、
自分で自分をコントロールしてください。

あとは、自分の周りの環境は自分で整えていいです。
イヤな部活、イヤな人間関係につかって我慢する必要は
まったくないし、自分でつくっていいのだから。

自分が居心地がよい場所を、
これからは自分でつくってもいいのですよ。」

17歳なら、わかるはず。
そう思って、話をしました。

で、おじいちゃんには、
「お孫さんは、頭が良くて、優しくてよく気がつくので
神経も少し繊細になっていて、
それが自律神経に影響してお腹が痛くなっています。
漢方薬を処方して、本人にきちんと話たので、心配ありません。」

そうお話したら、男子が、とても嬉しそうでした。
そりゃあ、そうだと思いました。

間違えたレッテルを剥がしたのですから。
「君は、そうではない」

家族の風景

 

わたしは、その17歳の男子の家族のことを想いました。
2人の子どもを私立の学校に合格させ、
通わせて、学習の場は与えています。

ですが、兄はしょっちゅう体調不良、妹は毎日荒れている。

「どこかおかしいな、どこか間違ってるかな?」
いつ、親が気がつくか?
いつ、親が見直そうとするか?
どこが、違うのか?
何が間違えてるのか?

でも「私立に通うお金を稼ぐためには
共働きしてるんだから、仕方ない!」
そうやって、忙しいフリをして、病院にも付いてこない。

2人の子ども達のことを、見て見ぬ振りをしていたのなら、
それは家族4人にとっても、おじいさんにとっても
しあわせなことにはならないはずです。

目の前のお金や、
学校のことに夢中になってしまうのもわかるのです。
ですが、
このように” 身体の症状 ” が教えてくれていることがあるうちに、
勇気を出して、見直し、
どこかが違っていると思ったのなら、
親は折れて、方向を変えることが子どもに生き方を教えることだと
わたしは思います。

その後、男子は2回病院にやってきました。
一度はまた、おじいちゃんと。

その時には、前髪をすっきりと短くし
表情も明るくなっており
「お腹が痛くなる頻度が減っている」とのことで

引き続き、薬を出して、
「髪型がいいね!」と言って
返しました。

2回目は、お母さんが一緒にやってきました。
私はお母さんには特に何も言いませんでした。
お母さんの表情をみて
「もう大丈夫だな」と思ったからです。
お母さんも何か言いたげでしたが
その恥ずかしそうな、なんとも言えない表情だけで
私には十分伝わるものがありました。

家族の誰かが慢性的に調子が悪い家族の風景というのは
どこかに歪みがあるはずです。

子供は弱いし、まだわかりませんし、
おかしいな、と思っても親に捨てられたら困るので
自分が辛い、と言うことはなかなか、できません。

親がいつ、気がついてやれるか?です。
親が気がつけないまま、歪んだ家族でいたら
いつかそれは親自身の身にも、
体調不良、精神不安などの症状として
表現されてくるでしょう。

 

男児はすっかり元気なり
病院には来なくなりました。
よかったです。

病院に来なくて良くなることが
患者さんにとっては何よりです。



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内科医の私がなぜ、情報発信をしようと思ったのか?
また、私自身が生きづらさからどのように
今、気楽に適当にニコニコと生きるようになったのか?

その過程を書いた記事をこちらで公開しています。

女医とも子物語

2 件のコメント

  • はじめまして。週末から急性胃腸炎と診断され寝込んでいて、早期回復のため色々と記事を読んでいるうちにこのサイトに辿り着きました。
    あまりに自分の心を代弁するかのような記事が多く、驚きと感動と奇跡のようなものを感じています。私も本当にたくさんのことに悩み、いつのまにかいい歳になりました。それでもなお悩み続けていて、あー今年こそは何か変わりたいと思い始めており、少し無理をしすぎてストレスなどから急性胃腸炎になったと思われます。でもこの記事を読んで自分の家庭も複雑で私はダメな子なんだと思わざる得ない環境で育ってきました。そうじゃないと思いながらも、振り切ることが出来ずこの歳になり未だに悩んだりします。だけどこの記事に登場する男の子と、お母さんが歪みに気づき、方向転換なさったお話を読んで心の底から感動しましたし、素晴らしい先生だなと感動し、コメントさせていただきました。
    他の記事もとても参考になりそうですので、是非読ませていただきたいと思います。
    ありがとうございました。

    • 「自分の家庭も複雑で私はダメな子なんだと思わざる得ない環境で育ってきました。そうじゃないと思いながらも、振り切ることが出来ずこの歳になり未だに悩んだりします。」これを認めるだけでも、大変な勇気だ、と思います。表面的には「私は問題ないわよ」と装いながらも、実は影では抱えている方もたくさんいらっしゃいます。自分のここがきっと根っこなんだな、と認めることで、苦しい時期もあるかもしれませんが、そこを越えて生き直すことにより、今よりずっと楽にそして人にも優しく生きられるようになるチャンスを持ってらっしゃいます。どうぞ、慌てず焦らず、続けてください。

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